中小企業M&A保険
2020/11/18日経朝刊に、中小企業のM&A向け保険に大手損保がこぞって参入しているとの記事があった。筆者がM&Aアドバイザーをしていた前職時から、海外のM&A案件に対する保険は数年前から販売されていたが、その国内向け中小企業版の販売が始まったということになる。
中小企業白書2019年版によれば、国内中小企業経営者の年齢分布の山が、2018年までの23年間に47歳から69歳へ22歳上昇し、約半数の企業では後継者が未定なため、このまま放置すれば、近未来に650万人の日本の雇用が失われる可能性を中小企業庁は推計し問題提起している。こうした背景から中小M&Aは推奨されるようになっており、今年3月には「中小M&Aガイドライン」が中小企業庁のホームページに公開された。
先日、このガイドライン作成に携わった方からの説明をWeb上で聞く機会があった。筆者が最も気になったのは、DD(Due Deligence)は簡易に行われているという実態であった。「簡易とはどういう意味か?」「事後に問題にならないのか?」と質問したが、問題になるケースはあるが、コストをあまりかけられないから仕方ない、という趣旨の回答であった。
M&A契約では、簿外債務(例 従業員の賃金未払い、取引先から受けた訴訟等)等は、開示済のもの以外に存在しないこと等は、表明保証(Representation and Warranty。俗にレプワラ )する(させる)が、筆者の経験では、仮に事後にその問題が発生したとしても、売り手がその事象を認め、かつ双方が合意できる定量評価を設定し、売り手にその補償をさせることは大変難しいと考えており、表明保証は精神的な牽制という意味にしかならないと思っている。
上記日経記事のM&A保険は、その一つの解決手段ということになろうが、本当に効果を発揮するのか、暫く時間がたってから実態話を聞いてみたい。